書籍のご紹介

外国人児童生徒のための支援ガイドブック

著書の経験をもとに、架空の5人の外国人児童生徒の事例を取り上げ、学校や進路で起こり得る問題とその解決方法のヒントを分かりやすく示してくれています。

例えば、「なぜ掃除をしないのか」「なぜ日常会話はできるのに勉強はできないのか」「なぜ頭をなでただけで生徒が怒り出したのか」などを、国や宗教の文化的背景や児童生徒の生活環境と照らし合わせながら解説してくれています。

また、学校での日本語学習のカリキュラムを、時間割に合わせて提示してくれています。現場で起こり得る問題に対する解決策のヒントが書かれているという点においても、学校現場では非常に使いやすい本ではないかと思います。

またこの本では、「中国残留孤児とは何か」「外国人特別枠とは何か」「インドシナ難民とは何か」など、用語の説明もまとめてくれています。
「聞いたことはあるけれど、実際の意味はよくわかっていない」という方にも、オススメできる本です。
外国人児童生徒にまつわる図書の紹介や教材の紹介もされているところでも、著者の思いが伝わってきます。

全てを拝読し、著者の外国人児童生徒の受け入れに対する思いや、現状をなんとかしなければならない、と思っていらっしゃる熱いものを感じました。
このサイトのプリント制作においても、この本を大変参考にさせて頂きました。

現場の先生方に、是非ご一読頂きたい著書です。

中学生のにほんご学校生活編

これは、日本語を学ぶためのワークブックです。おおよそ200ページに渡って、日本語を学ぶための問題が収録されています。

特にこのワークは、「中学生の学校生活」に焦点を当てて作られているため、授業場面、部活場面、学校行事場面などのトピックに分けて問題が掲載されています。そのため、中学生の生徒にとっては、より状況をイメージしやすい内容になっています。

このワークブックは、「生徒が自分で考える力を養い、学習に主体的に取り組めるようになることを目指して、『生徒が自分で考え、理解する』ことを重視(Webサイトより)」して作られています。生徒が自習できるように、例題を多くしたりヒントを載せたりするなど、様々な工夫がされています。

また、主に会話重視の文法で問題が設定されている所も、日常生活に活かしやすいワークブックだと感じました。
中学生になると、ただ「勉強」となってしまうのは少しつまらない感じがありますが、このワークブックでは、友達との外出場面や文化祭などを想定した文法問題が入っていることも、好感が持てます。

対象は「ひらがなとカタカナの読み書きができる生徒」となっていますが、ある程度の日常会話ができる生徒の方が取り組みやすい内容かなという印象です。

様々な専門領域の先生方が、多角的な視点で作られた日本語学習教材です。
中学生の自習でどの教材を使うかお困りの先生方は、是非一度試してみてください。

学習力を育てる日本語教案集

これは、日本語を教えるための教案集です。
とよなか国際交流センターの「こども日本語教室」における、長年に渡って蓄積された知識やノウハウが存分に詰まった内容となっています。

日本語指導を、「文字」「体言」「用言」「文の組み立て」「作文」「読解」「教科への歩み寄り」といった領域に分け、それぞれの領域をさらに細分化し、指導目標や具体的な指導案、教材の選定、手順などを、表やイラストを交えて丁寧に解説してくれている1冊です。
指導者の準備物も記載されているため、実際の指導にも取り入れやすい内容かと思います。

巻末には、日本語力簡易診断基準表が掲載されており、児童生徒の日本語習得度のレベルを測ることができます。そのレベルによって学ぶべき単元が掲載されているため、「まず何を始めたら良いかわからない」という先生方には、是非参考にしていただきたい1冊です。

またこの教案では、”日本語指導を教科学習へ繋げる”ということを大切にしています。助数詞の学習からたし算やひき算に繋げたり、比較文型から地理学習に繋げたりと、児童生徒の生活に寄り添った内容であるところが、特徴的です。
児童生徒向けの教材やテストがCD-ROMに収録されていますので、指導者にとってもすぐに使えて良いかと思います。

著書にも明記されていますが、この教案集の主な指導対象児は、中学生と小学5・6年生です。中学年や低学年の児童生徒には、より具体的に指導をしたり、あらかた会話ができるようになってから必要部分を参考にしたりするように、明記されています。

多くの方がこの教案集の作成に関わり、議論し、研鑽して出来上がったものであることが伝わってくる著書です。
日本語指導を長く積み重ねていらっしゃる先生も、初めて日本語を教えることになった先生も、多くの方に読んでいただきたい1冊です。

学級担任のための外国人児童生徒サポートマニュアル

この著書は、外国人児童生徒を受け持つことになった担任の先生に是非読んで頂きたい一冊です。

この著書では、学校行事をどう保護者に説明するのか、進路指導や日本語指導をどう行えば良いのか、などが書かれています。
また、学級経営にも言及されており、外国人児童生徒の指導をするにあたっての校内体制が図で表されています。学校に勤める先生方にとっては、イメージがしやすいかと思います。

その他、外国人児童生徒を受け入れるにあたり、利用できる支援やサービスの記載があります。
役所や子育て支援センター、国際交流協会、NGO・NPO団体から発行されているガイドブックや窓口の説明が図になっているところも分かりやすく、すぐに調べることができます。

またこの著書には、外国人児童生徒の生育状況や言語力を一目で把握できるフォーマットがついています。これに沿って保護者から聞き取りを行うことで、学習指導や進路指導の見通しが持てるようになっています。

外国人児童生徒の保護者と良好な関係を築くことは、学校の先生方にとって大きな壁となることがあると思います。この著書では、保護者の出身国の教育制度を知る必要性があることを提案しており、それを調べることができるHPも紹介されています。

日本語指導については、「日本語を学ぶ」のではなく、「日本語で学ぶ」という考え方をベースに、学習指導案を提示してくれています。実際のカリキュラム例も掲載されてあるため、学校での指導する際のイメージが持ちやすいかと思います。

まず何から始めたら良いかわからない、という先生方にはぜひ読んでいただきたい1冊です。